絶対王子は、ご機嫌ななめ

「ちょっと!? 柚子ちゃん大丈夫? 手、貸そうか?」

突然しゃがみ込んだ私に、智之さんが慌てて近寄る。

「うん、大丈夫」

そう言って智之さんの手を借りず立ち上がろうとしたけれど、よろよろと足がもつれてまた尻もちをついてしまった。

「政宗さんになにか言われた? はい、手」

「すみません」

智之さんの手を借りて立ち上がると、服の汚れを払いながら少し離れたところにいる政宗さんを見る。


おまえのために優勝してやる──


まだ耳にハッキリと残っている政宗さんの声と、唇の触れた感触。

どんなつもりで言った言葉かは分からないけれど、政宗さんのことを好きな私にとってそれは身体を熱くさせるのに十分すぎるものだった。

ギャラリーが大勢いる前で、あんなことをするなんて……。

未だ多くの視線を浴びている状況に置かれていて、恥ずかしいやら腹ただしいやら。相変わらず政宗さんは勝手なんだから。

色んな意味で顔が熱くなっていくと、顔を見られないように俯いた。



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