絶対王子は、ご機嫌ななめ

「教えなくてもいつもそばにいたんだ、俺だってすぐに気づけ」

なによ! その上から目線の偉そうな態度は!

俺だってすぐに気づけ──ですって?

こんな真っ暗闇の中にいきなり連れ込まれて、『あ、この匂い、この腕の感触。私の大好きな政宗さんだわ!』とでも言って欲しかったわけ?

エスパーじゃあるまいし、そんなの気づくかっ!!

少しずつ目が慣れてきて政宗さんの顔が薄っすら見えてくると、怒りは頂点にたどり着く。政宗さんの胸ぐらを両手でグイッと掴むと、目一杯背伸びをしてこれでもかというくらい顔を近づけた。

「政宗さんはいつもそう。偉そうに上からモノを言って、何様のつもりですか? 少しは私の気持ちを考えたことあります? 私は政宗さんのことが大好きなのに、もっと優しくしてくれたって。あ……」

ドサクサに紛れて、“大好き”って告白してしまった。

しかも、このタイミングって……。

せっかく丁寧にメイクして、お気に入りの服着てきたのに。一世一代の大勝負に打って出てきたというのに。こんな薄暗い倉庫みたいなところじゃ、ムードも素っ気もありゃしない。

この政宗さんの胸ぐらを掴んでる手、どうしたらいい?

興奮は一気に冷め、政宗さんと合っていた目を泳がせる。



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