絶対王子は、ご機嫌ななめ
「言いたいことはそれだけか?」

しばらく黙って私の話を聞いていた政宗さんが、ぼそっと呟く。反射的に目を戻すと、やっぱりいつもの仏頂面。

なのにどうして、そんなに声が柔らかいの?

政宗さんの真意を探るように瞳を覗きこめば、その答えはすぐに返ってきた。

穏やかで優しいキス。

今までのキスとは違い、それはすぐに離れることはなくて。角度を変えては、何度もついばむようにキスをしてくる。

慣れてない私は、政宗さんから与えられるキスを受け入れるだけで精一杯。

でも、なんか幸せ……。

身体中が熱さで、とろんと溶け出してしまいそう。

「ごめん。これ以上すると、やめられなくなりそうだ」

政宗さんは唇を離すと、少し苦しそうに眉間にしわを寄せた。

「政宗さん?」

私が顔を覗き込むと、眉間のしわをより一層深いものにする。

「試合の前におまえの顔見れば気持ちが落ち着くと思ったのに、逆効果だったか……」

ぶつぶつと自分に言い聞かせるように話す政宗さんが可笑しくて、小さくプッと笑ってしまう。

「どうしちゃったんですか、政宗さん? 逆効果ってどういう意味ですか?」

「笑うな。逆効果っていうのはな……」

政宗さんはそこで言葉を切り私の腕を引き寄せたかと思うと、身体を強く抱きしめた。



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