絶対王子は、ご機嫌ななめ
「大ファンなの、私。この大会で復帰だと知った時は、それはそれは嬉しくって。久しぶりにみた曽木プロは、イキイキとした目をしていて全盛期を思い出したわ。彼をまたあの姿に戻したのは、あなたね」
急に戻された女性の目が鋭いものに変わっていて、一瞬ドキリとする。
「あ、あの……」
私なにか、この人を怒らせてる?
別に私が、政宗さんのヤル気を引き出したわけじゃないと思うんだけど……。
女性の視線から目を離すと、彼女はクスッと笑みを漏らした。
「ごめんなさい。別に責めてるわけじゃないのよ。二日前のラウンド前、曽木プロと一緒にいたでしょ?」
「ああ……」
大勢のギャラリーの前で、いきなり顎を掴まれたあの時のことだ。
その時のことを思い出して、急に顔が熱くなる。
「そんな照れなくてもいいのよ。私あの時の曽木プロを見て、この人でもこんな顔をするんだってキュンとしてしまって」
「はぁ……」
「あの時確信したの、曽木プロはあなたのことを大切に思ってるってね」
そうなの? あの時のやりとりで、そんなことを思ったなんて驚きだ。私にことなんて構うことなく人前であんなことしたのに、私のことを大切に思ってる?
告白をされた今なら、それはなんとなくわかるけれど。あの時の私には、大切に思われてるなんてこれっぽっちも感じてなくて、ただ困っていただけ。