絶対王子は、ご機嫌ななめ
「最終日、ちょっと苦戦しているみたいだけど。曽木プロならやってくれる。あなたもいるしね」
女性は私の顔を覗き込むと、なんともチャーミングな笑顔を見せる。
「私はいてもいなくても、政宗さんは優勝してくれると思います」
「そうね。でもあなたが原動力になってることは間違いないから」
政宗さんにとって、私がそんな存在になっていれば嬉しいけれど。
ティーグラウンドに目線を移動すれば、政宗さんがティーアップを終え今から一打目を打つところ。
16番ホールはパー3のショートホール。智之さん曰く、『政宗さんが得意とするホール』なんだそうだ。
「政宗さん、頑張って」
小さな声で応援すると、政宗さんが一瞬こちらを振り返った。
その目が自信に満ちていて、胸が大きく跳ねる。
いつもの俺様政宗さんの顔だ。
それだけで政宗さんは大丈夫と、変な自信が私の中に湧き上がる。
そして政宗さんがセットアップの姿勢からクラブを振りかぶり、一打目をスイングした。
私は祈るように両手を合わせると、グッと握り目を閉じる。
するとティーグラウンドを囲んでいたギャラリーから、大きな歓声が沸き起こった。