絶対王子は、ご機嫌ななめ

でもそんな私に彼は少しも怯むことなく立ち上がり、私に近づくと顎をグイッと持ち上げた。

「何、あまちゃんかと思ってたけど、結構気が強いんだな」

「そ、そ、そうですよ。け、結構気が強いんです。そ、それが何か?」

動揺丸見え、噛み過ぎでしょ!! 

普段の私は全然気なんて強くない、円歌ちゃんに助けられないと何もできない小心者なんだから!!

それに政宗さん、顔が近すぎ。そんな見目麗しい顔で見つめられたら、怒ってる気持ちもとろんと溶けてしまう。

「まあ、いいや。とにかくコーヒー持ってこい」

もう一度顎をクイッと上げると、少し意地悪な顔を見せてからピンッと弾くように離す。そしてまたソファーに座ると、テーブルに置いてあった雑誌を読み始めた。

な、何なのよ偉そうに!! 何度も言うようだけど、私は政宗さんの召使じゃないんだから!!

こちらを見ていないのをいいコトにベーッと舌を出すと、踵を返してコーヒーメーカーが置いてあるカウンターへと向かう。

なんで私が政宗さんにコーヒーを淹れてあげなくちゃいけないの? まさかこれも、仕事の一環とか言わないよね?

そんな仕事、ないない!!

腑に落ちない気持ちなのに、私は政宗さんのためにせっせとコーヒーを淹れていて。それをソーサーに乗せ砂糖とミルクをセットすると、彼の前に差し出した。

「どうぞ、コーヒーです」

「サンキュー」

雑誌を読みながら私の顔も見ずにそう言うと、淹れたてのコーヒーを飲み始めた。

ホント勝手な人。そう思うのに、コーヒーを飲む政宗さんの喉元が男っぽくて。ついつい目を奪われてしまう。



< 18 / 222 >

この作品をシェア

pagetop