絶対王子は、ご機嫌ななめ
でもそんな私に彼は少しも怯むことなく立ち上がり、私に近づくと顎をグイッと持ち上げた。
「何、あまちゃんかと思ってたけど、結構気が強いんだな」
「そ、そ、そうですよ。け、結構気が強いんです。そ、それが何か?」
動揺丸見え、噛み過ぎでしょ!!
普段の私は全然気なんて強くない、円歌ちゃんに助けられないと何もできない小心者なんだから!!
それに政宗さん、顔が近すぎ。そんな見目麗しい顔で見つめられたら、怒ってる気持ちもとろんと溶けてしまう。
「まあ、いいや。とにかくコーヒー持ってこい」
もう一度顎をクイッと上げると、少し意地悪な顔を見せてからピンッと弾くように離す。そしてまたソファーに座ると、テーブルに置いてあった雑誌を読み始めた。
な、何なのよ偉そうに!! 何度も言うようだけど、私は政宗さんの召使じゃないんだから!!
こちらを見ていないのをいいコトにベーッと舌を出すと、踵を返してコーヒーメーカーが置いてあるカウンターへと向かう。
なんで私が政宗さんにコーヒーを淹れてあげなくちゃいけないの? まさかこれも、仕事の一環とか言わないよね?
そんな仕事、ないない!!
腑に落ちない気持ちなのに、私は政宗さんのためにせっせとコーヒーを淹れていて。それをソーサーに乗せ砂糖とミルクをセットすると、彼の前に差し出した。
「どうぞ、コーヒーです」
「サンキュー」
雑誌を読みながら私の顔も見ずにそう言うと、淹れたてのコーヒーを飲み始めた。
ホント勝手な人。そう思うのに、コーヒーを飲む政宗さんの喉元が男っぽくて。ついつい目を奪われてしまう。