絶対王子は、ご機嫌ななめ
「ちょっと、あなた! 曽木プロやったわよ!!」
女性の興奮した声に目を開けると、ティーグラウンドの上でガッツポーズをする政宗さんの姿が目に入った。
一体、何が起こったの?
ギャラリーのあまりの騒ぎように、状況がつかめなくてあたふたしてしまう。
とその時、少し離れた場所にいた円歌ちゃんがものすごい形相で駆けてきた。
「柚子! 今のちゃんと見てた?」
「円歌ちゃん、何があったの?」
「何言ってんのよ! 政宗さんがホールインワン決めたのよ!」
ホールインワン?
それって、ティーグラウンドから売ったティーショットがそのままカップインしたっていうこと?
「それって、スゴいことなんだよね?」
円歌ちゃんの肩を揺さぶって、興奮気味に聞いてみる。
「そうだよ。これで一気にトップだよ! 柚子、良かったね」
トップ……。
まだ残り2ホール残っているけれど、このホールインワンは政宗さんを勢いづけるのに十分だった。だってその証拠に、政宗さんの顔からはイライラしたとこが消えていて。いつもの自信満々な政宗さんになっていたから。
これでもう大丈夫。政宗さんは、必ず優勝を決めてくれる──
変な確信が、私の中に出来上がった。
政宗さんの顔をもう一度見れば、政宗さんと視線が絡む。
『絶対に優勝してやる』
政宗さんの目がそう語っているようで、私は大きく頷いた。