絶対王子は、ご機嫌ななめ

「柚子、その顔ヤバくない? ゆるゆるに緩んじゃってるよ」

「だって……」

今日の政宗さんは、いつにも増してカッコいいから。

目的を達成するために真剣になっている政宗さんは、普段見ている政宗さんと少し違っていて。いつもの上から目線で俺様の政宗さんと、ホントに同一人物なの?と疑ってしまうほどだ。

「柚子。政宗さん、打つよ」

円歌ちゃんの声に、心臓が跳ねる。

政宗さんなら、絶対に決めてくれる。

そう分かっているのに、最後のシーンが怖くて見ていられない。

目をギュッと瞑り、円歌ちゃんの袖を掴んだ。

と、耳に飛び込んできたのは『コロロンッ!』と少し甲高い音。その音に慌てて目を開けると、天高くガッツポーズを決める政宗さんの姿とギャラリーが大歓声を上げる姿が同時に目に入った。

「柚子ちゃん! 政宗さんやったね。優勝だよ!」

まだ事の次第を上手く把握できてない私は、智之さんに抱きつかれたまま呆然と立ち尽くす。

「ホントに優勝しちゃったんだ……」

やっぱり政宗さんってスゴい。有言実行、さすがは絶対王子の政宗さんだ。

専属キャディーと喜びを分けあっている政宗さんを見ていると、彼の笑顔に私まで半端ない嬉しさが込み上げてきた。



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