絶対王子は、ご機嫌ななめ
「政宗さん、ああ見えて結構子供っぽいんですよ。俺様なのに」
「はいはい。おノロケ、ごちそうさまでした。あ~あ、私も早く彼に会いたくなってきちゃった。表彰式が終わったら、ダッシュで帰らなくっちゃ」
「え? そうなの?」
「どうせ柚子は、政宗さんと一緒に帰るんでしょ?」
円歌ちゃんのその言葉で頭の中に、『今夜は帰さない』と言った政宗さんの低い声を思い出す。
あれって、やっぱりそういうこと?
恋愛小説やドラマの中で『今夜は帰さない』ってセリフが出てくると、その後決まって甘いシーンが登場する。そのシーンに、政宗さんと自分を埋め込んでみると……一瞬で顔がゆでダコ状態になってしまった。
「円歌ちゃん、私どうしよぉ~」
「あんた、何真っ赤な顔してんのよ?」
「だって政宗さん、今夜は帰さないなんて言うんだもん。それって、やっぱり……」
こういうことは、経験者に聞くに限る。
藁をもつかむ思いで円歌ちゃんにしがみつくと、円歌ちゃんをじっと見つめた。
「そういうことか。柚子ももう二十二歳だし、そろそろ覚悟決めたらどう? 政宗さんのこと好きなんでしょ?」
「それはそうだけど……」
まだ心構えができていないというか、未知の世界過ぎてそこまで気持ちが追いつかない。