絶対王子は、ご機嫌ななめ
司会者もまさか個人名が出てくるとは思ってなかったみたいで、「はぁ、そうですか……」って少々顔が引きつってるような。
でも──
喜びを一番に伝えたいのが“私“って言ってくれたのは素直に嬉しくて、顔がほころんでしまう。
「政宗さん、やるじゃない。柚子、彼女だって。良かったね」
円歌ちゃんの言葉に、照れながら小さく頷いて見せる。
こういうアクシデント、まんざらでもないかも……。
ほころんでいる顔に熱さを感じ、照れ隠しでちょっとだけ俯く。
でもその後がマズかった。
政宗さんは司会者が困っているのに気づいてないのか、私の方を見てバシッと指をさすと、司会者のマイクを取り上げてしまう。
「今日この会場に彼女が来てるので紹介します。柚子、こっちに来い!」
政宗さんはそう言うと、顔に不敵な笑みを湛えた。
出たっ! 絶対王子の俺様スマイル。あの笑みを見せた時の政宗さんは、何よりも恐ろしいことを私は知っている。
「ま、円歌ちゃん、どうしよ~」
「そんなこと私に聞かれても困るし! 行くしかないんじゃないの。行かないと、後で何されるかわからないわよ!」
「そんなぁ……」
円歌ちゃんに背中を押され立ち上がると、不安な気持ちのまま政宗さんに向って歩き出した。