絶対王子は、ご機嫌ななめ
「ジャム、昼飯は?」
「え? ああ、今から事務所で、頼んであるお弁当食べますけど」
どうしてそんなこと聞くんですか? と聞く前に政宗さんは立ち上がると、休憩室の電話の内線ボタンを押した。
「あ、俺。悪いけど、橘の弁当持ってきてくれるか? ああ、じゃあ頼むわ」
へ? 橘って、私の苗字じゃない? その弁当をここに持ってこいって言うことは……。
ここで食べろっていうことですかぁー!?
嘘でしょ? マジで? そんなこと勝手に決めないでよ!!
貴重な昼休憩の時間を半分使われただけでも腹ただしいのに、その上ここで弁当を食べろって? 政宗さんに見られながら食べるなんて、あり得ないんですけど。
事務所で食べるからいいですって言おうかどうしようか迷っていると、政宗さんが自分の向かい側のソファーを指さした。
「ジャム。智之が弁当持ってくるから、ここで食え。ひとりで食うよりいいだろ」
「……え?」
そんなこと気にしてくれてたの?
確かに休憩時間は半分過ぎているから、きっとひとりで食べることになるんだろうけれど。
特にそんなこと気にもしていなかった私は、政宗さんの言葉に驚きを隠せない。
「なんだよ、その顔。そこに座れって行ったんだけど、聞こえない?」
「あぁ、はい……」
嬉しいような、照れくさいような。
車の鍵をインロックしてしまった時も思ったけれど。言うことや見せる顔は冷たくて偉そうなのに、なんやかんやで優しくて。結局、言いたいことが言えなくなってしまう。
しょうがない。今日はここで食べていくことにしよう。
事務所で食べるのは諦らめてソファーに腰を掛けると、政宗さんを見つめる。
また雑誌を読み始めていた政宗さんは、私の視線に気づいたのか顔をこっちに向けた。その目が艶を帯びてい
て、思わずゴクンとつばを飲み込んだ。