絶対王子は、ご機嫌ななめ

いつになく優しく微笑んでいる政宗さんがちょっと怖くて、歩み進める足が重い。

それでもなんとか政宗さんのところまでたどり着くと、ギャラリーから拍手喝采が沸き起こった。

私は一般人で、こんな場所に慣れていない。

緊張で身体中汗びっしょりだし、恥ずかしさから顔は熱くなってきて沸騰寸前だ。

「政宗さん。どうして私の名前を出したんですか?」

身体を近づけ、少し怒り口調で問いただす。

「司会者が『喜びを一番に伝えたいのは誰だ』って聞くから、正直に答えたまでだ」

「そ、それはそうですけど……。もう少し私の気持ちも考えて下さい」

「おまえの気持ち? なんだ、柚子は俺のことが好きじゃないのか?」

「だから、そういうことじゃなくて。あ~もう! 何もこんな大勢の人がいる前で、私の名前を出すことないじゃないですか!」

政宗さんの見当違いの答えにだんだん腹が立ってきて、いつの間にか声が大きくなってしまう。



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