絶対王子は、ご機嫌ななめ
絶対王子とお姫様
曽木プロとしての、久しぶりのトーナメント出場。その上優勝までしてしまった政宗さんは、また時の人となってしまいインタビューを受けまくっている。
グリーン上から逃げ出したあと、直接政宗さんには会っていない。だからここで少しは会えるかも……なんて思っていたけれど。
「この調子じゃ無理かも」
「何が無理なの?」
突然頭上から聞こえた声に驚いて、慌てて振り向く。
「久しぶり」
「……矢部さん……」
タイミングの悪いことに、今は円歌ちゃんと智之さんは席を外している。
第一印象最悪。出来れば会いたくなかった人に会い、その思いが露骨に顔に出てしまった。
でも矢部さんはスポーツライター。しかも政宗さんを追っているみたいだから、ここにいるのは仕方のないことだけど。
「こんな喜ばしい場所で俺に会って、“最悪”って顔してるよね?」
「そんなこと……」
当たっているだけに、その後の言葉が見つからない。
「まあいいさ、そんなことどっちでも。それにしても曽木のやつ、優勝するまで力つけてたとは、お見逸れしました」
相変わらず人を小馬鹿にしたような言い方にカチンとくる。
でも私も大人だ。ここは平常心を保ち、素直な気持ちで「ありがとうございます」と頭を下げた。