絶対王子は、ご機嫌ななめ
「それにしてもだ。大勢のギャラリーの前で、派手にイチャイチャしてたねぇ」
「えっと、それは……」
「やっぱり曽木と付き合ってたんじゃないか。前に会った時に教えてくれてれば、俺がスクープできたのに」
矢部さんは「チッ」と舌打ちをすると、私の肩に手を置く。
それだけでも気持ちが悪いのに、矢部さんは私の目線まで屈み込むと人差し指で頬から顎のラインをひと撫でした。
「や、やめて下さい」
「これからは曽木のこと、何でも教えてくれるかな?」
『誰があなたなんかに!』そう言い返したいのに、顔の距離が近くて怖さから何も言えないでいた。
目をぎゅっと閉じ怖さに耐えていると、今度は聞き覚えのある大好きな声が私の耳の届く。
「矢部。その汚い手を、柚子からさっさと離せ」
顔を上げれば、いつでも私を守ってくれる“絶対王子”がそこにいて。私の肩から矢部さんの手を払いのけた。
「カッコいい登場だな、曽木。愛する女を守るナイトってところか」
「勝手に言ってろ。そんなことより、なんでおまえが柚子と話をしてる?」
政宗さんは私を抱き寄せると、矢部さんの正面に立つ。