絶対王子は、ご機嫌ななめ
「曽木、そんな怖い顔するなよ。おまえの恋人に、ちょっと挨拶しただけだろ」
「おまえには、いつも裏があるからな。今後一切、柚子には近づくな。いいな?」
「はいはい。じゃあ取材したい時は、二人一緒でお願いしますね」
特に反省した感じもなくひょうひょうとした顔でそう言うと、矢部さんは祝賀会会場内へと姿を消した。
「政宗さん、すみません」
「全くだ。おまえがボーッとしてるから、矢部みたいな奴に絡まれるんだ。ちゃんと反省しろ、反省」
そこまで言わなくてもいいのに……。
でもどうせ何を言ったって同じことを言われるだけ。だったら政宗さんの腕の中でおとなしくしていたほうが、賢い選択というものだ。
「政宗さん? こんなところにいてもいいんですか?」
「ん? ああ、どうだろう。だぶん、マズイだろうな」
「だったら戻ってくださいよ! 私はもう大丈夫ですから」
私は慌てて、政宗さんの腕の中から出ようとしたけれど……。
政宗さんは私を腕を掴んで、そのまま引っ張るように歩き出した。
「え? ちょっと、政宗さん! どこ行くんですか?」
「あそこ」
そう言って、政宗さんが指さしたのは……。