絶対王子は、ご機嫌ななめ

でも私の心も相当厄介で、恥ずかしいとは思っていても身体は自分から離れてくれなくて。離れないどころか、もっともっとと意志とは反対の行動を起こしてしまう。

だって政宗さんの唇は、柔らかくて甘くて……。

私の意識と身体を、簡単に溶かしてしまうから。

それでもほんの少し残っていた理性が、政宗さんの身体を押し離す。

「なんだ?」

私から身体を離したのが気に入らなかったのか、政宗さんの機嫌は悪い。

「なんだじゃないですよ! みんな見てます!」

「知ってる。でも悪いのはおまえだろ。俺はちゃんと言ったはずだ。『早く答えないと、ここでキスする』ってな。それに……」

そう言って政宗さんはニヤリと笑ってみせると、私の髪に手を回し入れ引き寄せる。

「俺にキスされて、柚子もまんざらじゃなかったろ?」

耳元でそう囁く政宗さんは相変わらず意地悪で、でも政宗さんらしくって。

「そ、それは……。だとしたら、どうするんですか?」

相変わらず可愛げのない私は、こんな返答しかできない。

でもそこは政宗さんの方が一枚も二枚も上手で、

「どうする……か」

政宗さんはぼそっと呟くと、まだ手にしていたマイクを握り直した。



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