絶対王子は、ご機嫌ななめ

「そんな心配そうな顔をするな。半分もらうだけだから」

「は、半分?」

何を半分? 半分なんて言うんだから、私……じゃないよね?

あはは。何考えているんだか……。

じゃあやっぱり、何を半分?

ひとり首をひねりながら考えていると、休憩室の扉が大きな音を立てて開いた。

「ったく、政宗さんは俺を使い過ぎだって。せっかくバイトの女の子たちと話してたのに」

やっぱりチャラ男なのね。女の子たちを口説いてる姿が、安易に想像できちゃうよ。

口を尖らせながら政宗さんに文句をいう智之さんを見て、苦笑してしまう。

「はい柚子ちゃん、お弁当。政宗さんはこっちね」

そう言って智之さんが政宗さんに渡したのは、皿と割り箸。

ん? と思いながらも、政宗さんもなにか食べるんだろうと弁当箱を開く。

「おお。今日の日替わり弁当、ウマそうだな」

そう言いながら政宗さんは割り箸を持った手を伸ばし、私の弁当のご飯を半分かっさらっていった。

もしかして半分って……。

わなわなと震えだす手。これってもしかしなくても、そういうことだよね?

政宗さんを見ていると私の弁当から次々とおかず持って行き、あっという間に半分姿を消してしまった。

「こんなに食べたら太るだろ。俺がダイエットに協力してやるんだ、ありがたいと思え」

信じられなーい!! 前言撤回!! ちょっとでも優しいなんて思った私、馬鹿!! 馬鹿馬鹿!!

さっきの時間を返せーーー!!

なんて今更思っても、目の前の政宗さんは美味しいそうに弁当を食べていて。

ガックリと肩を落とした私の肩に、智之さんが「ご愁傷様」とそっと手を置いた。
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