絶対王子は、ご機嫌ななめ
「政宗さん?」
政宗さんが動き出すと、一体何を言い出すんだと不安が募る。
「ん? そんな顔するな。せっかく柚子がその気になってるのに、この機会を逃すのは男としてあり得ないだろ?」
「な、なんですか!? その気って私は……」
「黙れ」
政宗さんはズルい。たった一言と触れるだけのキスで、私の声と心を抑えてしまう。
「みなさん、結婚の件につきましてはまた後日会見を開かせていただきます。ので……」
そこまで言うとマイクを司会者に渡し、空いた方の手で私の右手をギュッと握った。
「今日はこれで失礼します!」
突然私の手を引き走りだす政宗さんに、会場を気にしながらも必至についていく。
「ま、政宗さん! いいんですか?」
背中側からは、会場が騒然としているのが伝わってくる。
この祝賀会の主役は政宗さんで、その人が『今日はこれで失礼します』といなくなっちゃうなんて前代未聞。
「まあ、なんとかなるんじゃないか?」
「そんなぁ~」
「今の俺は、柚子とふたりきりになりたくてしょうがないんだよ。ごちゃごちゃ言ってないでついて来い」
「は、はい……」
こんな時にも、有無も言わせない絶対王子。それはそれで政宗さんらしいんだけど……。