絶対王子は、ご機嫌ななめ

「おかえりなさいませ、曽木様」

ドアマンは私を下ろすと、運転席側から回ってきた政宗さんに挨拶をする。

「車、よろしくね。柚子、行くぞ」

政宗さんはマスターキーをドアマンに渡し、私の手を取って歩き出した。

な、なんか、ドラマで見たことあるような光景なんですけど……。

政宗さんに手を引かれ、まるで他人ごとのようにホテル内を見渡す。

フロントには品の良い紳士が立っていて、政宗さんを見つけるとにこやかな笑顔を見せた。

「曽木様、おかえりなさいませ。本日は、誠におめでとうございます」

フロントマンが丁寧に頭を下げると、政宗さんは少し照れたように頭を掻いた。

「ありがとうございます」

政宗さんでも、照れることなんてあるんだ。

今日は朝から政宗さんの意外な一面が見れて、かなりオトクな気分。

政宗さんの横顔を見て、ひとり微笑む。

「人の顔見て、何笑ってるんだ?」

「え? あ、その……政宗さん、嬉しそうだなって思って」

さすがに『オトクな気分』とは言えないけれど、嬉しそうと思ったのも嘘じゃない。

仕事の時はほとんどと言っていいほど顔色を変えない政宗さんだったのに、こんなにも表情豊かだったなんて。
なんだか、私まで嬉しくなってしまう。



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