絶対王子は、ご機嫌ななめ

乗り込んだエレベーターは静かに上がっていき、最上階で「ポンッ」と音を立てて止まる。

エレベーターのドアが開くと、そこはもう入り口で。

「最上階に一室だけのスイートルームだ」

政宗さんは耳元でそう囁くと、私を抱きかかえてしまった。

「えぇ!? ちょ、ちょっと政宗さん! 下ろしてください!」

「嫌」

子供じゃあるまいし、嫌って……。

たった一言で片付けられた私の言葉は跡形もなく消えさり、お姫様抱っこされたまま部屋へと連れて行かれてしまう。

ここまで来たら、もうなるようにしかならないよね……。

私が意を決したのと同時に、政宗さんが部屋のドアを開ける。するとまだ電気のついていない部屋は、壁一面の窓から外の瞬く光を浮かび上がらせていた。

「うわぁ……」

お姫様抱っこされているのも忘れて、その景色に目を奪われる。

さすがはスイートルーム。部屋だけじゃなくて、景色まで豪華なんだ……。

声にならないほど感動していると、一瞬からだがふわっと浮かびベッドへと下ろされた。

ふかふかの掛け布団に身が沈み、それだけで心臓がドキンと大きく鼓動を打つ。



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