絶対王子は、ご機嫌ななめ

夜景に感動して今自分が置かれている立場を忘れていたところを、いきなり現実に引き戻される。

そうじゃない、今は夜景に感動してる場合じゃないでしょ!

ベッドの上でどうしたものかと起き上がろうとして、その身体を覆いかぶさってきた政宗さんに押さえ込まれる。

「ま、政宗さん、どうしたんです? プロレスごっこでもするんですか?」

そんなコトするわけ無いと分かっているのに、私のことを見つめる政宗さんの目が妖艶に光っていて、思わずおかしなことを口走ってしまう。

プロレスごっこって……。

我ながらおかしなことを言ったもんだなと、クスッと笑みがこぼれた。

「へえ~。恋愛経験のないおまえが、この状況で笑顔でいられるとは。意外と余裕あるんだな」

政宗さんは私の顎を掴み顔を少しだけ上げると、ゆっくり顔を近づける。

「余裕なんてない……」

そんなものあるはずないじゃない。私が恋愛初心者だって知ってるくせにそんなことを言う政宗さんは、とことん意地悪で。頬を膨らませて怒ってみても「怒ってるのか? じゃあ……」と唇を重ねられてしまった。

触れるだけの甘いキスじゃない、より深く相手を求めるような濃厚なキス。

余裕ないって言ったのに……。

政宗さんはそんなことお構いなしに、私の唇を貪るように塞いだ。



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