絶対王子は、ご機嫌ななめ
 * * *

それにしても政宗さんって、美味しそうに食べるよね。

『もしかして、今日はじめての食事なの?』と思ってしまうほどの食べっぷりに、食欲の無くなってしまった私は弁当箱をそっと彼の前に差し出した。

「政宗さん、これもどうぞ」

「何? 食わないの?」

「はぁ。なんだか食欲無くなっちゃって」

「ふ~ん、そうなのか。だったら遠慮なく」

少しの躊躇もなく弁当箱を持って行くと、政宗さんは残っていた半分の弁当をペロッと平らげてしまった。

うん。お腹空いてたんだよね、きっと。でもちょっと子供みたい。

政宗さんの意外な一面を見てしまった私は、ちょっと得した気分になってしまい、胸をキュンと弾ませる。

ってこれは間違っても恋の“キュン”ではなくて、母性愛的な“キュン”なわけで。そこんとこを勘違いしてもらっては困るわけで……。

なんて、自分で自分にいいわけをしてしまう。

なにしてるんだろう、私。

諦らめにも似た境地で立ち上がると、政宗さんにお茶を淹れてからドアに向かう。

「それじゃあ、失礼します」

「おう、またよろしくな」

できたらもう二度と、よろしくしたくないんですけど。

と心の中で呟くと、部屋を出た。

「柚子ちゃん、お疲れ」

声がした方に振り向けば、声の主は智之さんで。私を待っていたのか壁にもたれかけていた身体を起こすと、隣に肩を並べた。



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