絶対王子は、ご機嫌ななめ
「よし、頑張るぞ!!」
腕を振り上げようとして身体を動かすと、はずみで車のドアを閉めてしまった。
「ピピッ!!」
「え?」
何、今の音? 私の車から聞こえてきたような。
ドアを開けて確かめようと、ドアノブに手を掛けたけれど……。
「えぇ!? 嘘!! なんで開かないの?」
何度ガチャガチャとしてみても、うんともすんとも動かない。
なんで? 私なんにもしてないのに!!
車の中を覗きこめば、鍵が入っている私の鞄は助手席にチョコンと置いてあり。後部座席には、先日もらったばかりの制服もハンガーに掛けられてフックに吊り下がっている。
「どうしよう……」
ああ、まだこの時間ならお父さんかお兄ちゃんが家にいるはず。連絡すれば来てくれるかも!!
でもどうやって連絡すればいいの? スマホは車の中でしょ?
はい、そうでした……。
じゃあ練習場のクラブハウスに行って、電話を借りる?
でも初出勤の日にそんなマヌケなことをしたなんて、出来れば知られたくない。
でもここで、なにもしないでいるわけにもいかないし……。
「もう!! なんで勝手に鍵が掛かっちゃうのよ~」
どうしたらいいのかわからなくなって、その場にしゃがみ込む。
腕時計を見れば、まだ七時五十分。初出勤だからと早く家を出たから、出勤時間までまだ余裕はあるけれど。
「一体どうしたらいいのよ……」