絶対王子は、ご機嫌ななめ
ファーストキス
「ごちそうさまでした」
「ああ。腹膨れたか?」
「はい、大満足です。ありがとうございました」
結局どんな状況でも、人間美味しそうな食事が目の前にあれば食べられるというもので。告白しようと思ったのに違うことを言ってしまい政宗さんを怒らせたことなんて、綺麗さっぱり忘れてお腹いっぱい食べてしまった。
ウエストのサイズが、2サイズくらい大きくなっちゃったんじゃない?
これが家だったら、スカートのホックを外しちゃうところだけど。いかんせん今は、政宗さんと駐車場まで歩いてる最中で。ふうと大きく息を吐くと、少しだけお腹を引っ込めた。
政宗さんの車は、黒のスポーツセダン。洗練されたボディーデザインは大人な政宗さんに似合っていて、文句のつけようがない。
シートは総革張りで、そのフィット感は快適な座り心地を私にもたらせてくれる。
助手席に座るとまるで彼女にでもなったかのような気分になって、少しだけ頬が熱くなる。政宗さんの横顔をちらっと見れば、その端正な顔つきに体まで熱くなってしまった。
ど、どうしちゃったの私!?
突然政宗さんを意識してしまい彼から目を外しても、車の中という密室空間にそわそわと落ち着かない。
「どうした?」
「ひゃあ!!」
体を寄せた政宗さんが、至近距離で囁く。あまりの近さに、変な声を出してしまった。
今度は恥ずかしくなって俯くと、すっと伸びてきた政宗さんの左手が俯いた私の顎を掴む。無理やり顔を上げさせられるとクイッと顔の向きを変えられ、政宗さんと目が絡まった。