絶対王子は、ご機嫌ななめ
「やけに顔が赤いけど、気分良くないのか?」
顔が赤い? いやいや私は至って健康、全然元気なんですけど。
顔を赤くしてるのは、政宗さんとの距離が近いから。こんな見目麗しい顔が近くにあったら、誰だって赤面してしまう。
でも政宗さんは私のそんな気持ちに気づきもせずに、顔の距離を縮める。
な、なになに。なんでそんなに顔を近づけてくるの? このままだと私、政宗さんにキスされちゃう? ファーストキスもまだな私の処女唇が、政宗さんに奪われちゃう!?
でもファーストキスの相手が政宗さんなら、それが彼氏じゃなくてもいい。
だって初めてのキスは、好きな人としたいから……。
ぎゅっと目を瞑ると、その時を待つ。心臓の高鳴りはハンパなくて、ギュッと左胸を掴んだ。
でも、唇に何かが触れる感触は一向になくて。代わりに、おでこに何かがぶつかった。
それが何かを確かめるために目を薄く開けて見ると、今までで一番近い距離に政宗さんのドアップ顔。慌てて顔を離そうとしても、いつの間にか頭の後ろに回されていた政宗さんの右手がそれを許さなかった。
「熱はないな。じゃあなんで顔が赤いんだよ?」
そう言うと政宗さんは片方の口角を上げて、ニヤリと意味ありげに笑ってみせた。
何、その顔? なんで、そこで笑われなきゃいけないの? もしかして私、からかわれてる?
政宗さんの顔をもう一度確認すると、やっぱりその顔は薄ら笑いしていて。わなわなと怒りが込み上げてきた。