絶対王子は、ご機嫌ななめ
「政宗さん、いい加減にして下さい……っ!?」
そう言って拳を振り上げると、その手をパシッと掴まれる。「あっ」と思う間もなく、政宗さんに唇を奪われてしまった。
な、なんなのコレ?
すぐには、この状況が理解できなくて。でもさっきまでの怒りは鳴りを潜めると、代わりに言いようのない気持ちが込み上がってきた。
嬉しい? 悲しい? 悔しい? 恥ずかしい? よくわからない……。
思考回路が停止して私の動きも止まると、政宗さんはチュッと音を立てて唇を離した。ゆっくり体を離すと、政宗さんと見つめ合う。
お互いにしばらく黙ったままでいたけれど、その空気にいたたまれなくなって弱々しく口を開く。
「どうしてキス、したんですか?」
私の問に、政宗さんの瞳が揺れる。でもそれも一瞬で、すぐにいつもの力強い目に戻すと私の顔を見据えた。
「さあ、どうしてだろうな。強いて言えば、したかったから?」
「したかったからなんて。政宗さんは、したかったら誰とでもキスしちゃうんですか?」
あまりにも無責任な言い方に、声を荒らげてしまう。
でも政宗さんは私の言葉を聞くと、顔をそむけ呟いた。
「誰にでもするわけ無いだろ。バカかおまえは」
「ば、バカ!?」
勝手に人にキスしといて、その言い草はないでしょ!!
バカの一言に腹は立つものの、その一方では『誰にでもするわけ無い』の言葉に勝手な妄想が暴走をし始める。