絶対王子は、ご機嫌ななめ
「は、はい?」
「智之がキスしたことないの?って聞いた時、おまえ動揺してたけど。やっぱりアレ、本当だったとか?」
……今更そんなこと聞く? そういうことは普通、先に聞くもんでしょ?
しかも動揺してるのをわかってたなら、キスなんて大事なこと彼女でもない女にしないでもらいたい。
いくら私が政宗さんことを好きだって、憧れていたファーストキスのシチュエーションくらいはあったんだから。
黙ったまま俯いていると、頭の上に手がふわっと置かれる。その感触に顔を上げると、赤信号で停止している政宗さんと目が絡まった。
「悪い」
「なんで謝るんですか? 謝るくらいなら、最初からしなきゃいいのに」
「ちゃんと責任とるから」
「責任って。そんなのいいです。勢い任せにしたキスに、責任なんて取ってもらわなくても。キスくらい、子供じゃあるまいし」
何よ責任って!! キスで子供はできないっつーの。それくらい、恋愛初心者の私にだってわかるんだから。
悪いとか責任とか、そんなこと言われたら惨めな気持ちになるじゃない。
政宗さんのバカ!!
「次の角を、右に曲がって下さい!!」
政宗さんが車を走らせると、勢い任せに言葉を吐く。
「はいはい。なあ、そんなに怒るなよ」
「怒ってません!!」
「その言い方が怒ってるだろ」
「クドいですね。怒ってないって言ってるんだから、怒ってないんです」
「ったく、可愛くない女だな」
「か、可愛くないって……。そんなこと、政宗さんに言われたくありません。自分だって、いつも仏頂面のくせに」
「な、なんだと……」
「何ですか? やりますか?」