絶対王子は、ご機嫌ななめ
「これは、ご作動だな」
「え?」
突然頭上から声が聞こえてきて顔を上げると知らない男の人が車の中を覗きこんでいて、いきなり何処かへ電話を掛け始めた。
「あ、もしもし、智之? 今どこだ? わかった。着いたらすぐに、俺の駐車場のところまで来てくれ」
顔色一つ変えず電話を終えると、その男の人は切れ長の目をスッとこちらに向けた。
「少し待ってろ」
「は、はい」
何なの? この人は誰? 今どこに電話したの? 少し待ってろって言うことは、もしかして助けてくれるとか?
期待を胸に立ち上がると、男の人をチラッと覗き見する。
歳は二十代後半くらい? スラリと細身の身長は私と三十センチは違うから、ゆうに一八〇は越えているだろうか。さらっとした黒髪に整った顔立ち。切れ長の目のせいなのか、ちょっと冷たそうな印象を受けなくもないけれど。
でもそこがクールでカッコいい……なんて、ちょっぴり思ってしまう。
電話をかけ終えてからスマートフォンをいじっていて私のことは一切無視の男の人が、ゆっくり顔を動かす。それに釣られて私も同じ方を向くと、一台の車が近づいてきた。
「早かったな」
男の人はスマートフォンをスラックスのポケットにしまうと、今来た車に身体を向けた。
「政宗さん、どうしたんですか?」
車から降りてきたのは私が言うのもなんだけど、今どきの若者らしく茶髪の軽そうな男の人で。目の前にいる人とのギャップにしばし驚く。