絶対王子は、ご機嫌ななめ

  彼の過去


「柚子、起きなさーい。もう朝よー」

「は~い……」

もう何年も聞いてる、お母さんのお決まりのモーニングコール。

どちらかと言えば朝は強い方で、いつもならすぐに起き上がりカーテンを開けるんだけど。今日はぐっすり眠れなかったのか、いまいち反応が鈍い。

時間を確認しようと、枕元に置いてあるスマホに手を伸ばす。

あれ? なんでないの? 必ずいつも、ここに置くのに。

顔だけ動かして横を見ても、スマホはどこにも見当たらない。

私って昨日の夜、何してたっけ?

まだ目覚めきってない頭で、昨晩のことを思い出す。

……………

「あっ!!」

昨日私、政宗さんとキスしたんだ! 

ベッドの上に体を起こすと、そっと唇に手を伸ばす。政宗さんの唇が触れた時を思い出すと、それだけで胸が締めつけられる。

「お前のことが好きだからキスした……って言ってくれれば良かったのに」

そんなことを考えてしまうのは、贅沢なこと?

朝っぱらから憂鬱な気持ちになって、はあ~とため息を漏らすと、ベッドから這い出てカーテンを開けた。

何気なく駐車場を見ると、そこにあるはずの愛車が……ない? どうして?

考えること数秒──…

「ああぁぁぁーっ!!」

そうだった! 七時半に政宗さんが迎えに来るんだった!!

時計を見れば、もうすでに七時を回っている。

「おかーさんっ!! 起こすの遅すぎ!!」

大慌てで服を着替えると、取るものもとりあえず部屋を飛び出した。



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