絶対王子は、ご機嫌ななめ
「円歌ちゃん?」
「もしかして、誰かとチューしちゃった?」
なんでバレるの!!
ボッと音を立てて、一瞬で顔が熱くなる。それでも何とか誤魔化すように、笑顔で首を振ってみたけれど。
「笑顔引きつってる。当たったみたいね」
円歌ちゃんにおでこをピンッと小突かれて、あっけなく撃沈。
「柚子も年頃の女の子だし、そろそろ大人の恋ってやつを経験しなくちゃね。さ、仕事仕事。さっさと支度して」
そう言って私の肩を豪快に叩くと、円歌ちゃんは更衣室から出て行ってしまった。
「円歌ちゃん、力強すぎ」
叩かれた肩をさすると、長椅子に腰を掛けた。
さっき円歌ちゃんは私が“女の顔”してるって言ってたけど、私のどこがどう変わったと言うんだろう。
目の前の壁にある鏡に映った自分の顔を見ても、今までと何ら変わりない。
と思うんだけどなぁ……っていけない。ここでぼさっとしてる暇ないんだった!!
結局政宗さんの車の中で、化粧だけは簡単に済ませておいた。あとは制服に着替えるだけ。
急いで着替えると手ぐしで簡単に髪を整え、ダッシュでフロントに向かった。