絶対王子は、ご機嫌ななめ

「円歌ちゃん?」

「もしかして、誰かとチューしちゃった?」

なんでバレるの!!

ボッと音を立てて、一瞬で顔が熱くなる。それでも何とか誤魔化すように、笑顔で首を振ってみたけれど。

「笑顔引きつってる。当たったみたいね」

円歌ちゃんにおでこをピンッと小突かれて、あっけなく撃沈。

「柚子も年頃の女の子だし、そろそろ大人の恋ってやつを経験しなくちゃね。さ、仕事仕事。さっさと支度して」

そう言って私の肩を豪快に叩くと、円歌ちゃんは更衣室から出て行ってしまった。

「円歌ちゃん、力強すぎ」

叩かれた肩をさすると、長椅子に腰を掛けた。

さっき円歌ちゃんは私が“女の顔”してるって言ってたけど、私のどこがどう変わったと言うんだろう。

目の前の壁にある鏡に映った自分の顔を見ても、今までと何ら変わりない。

と思うんだけどなぁ……っていけない。ここでぼさっとしてる暇ないんだった!!

結局政宗さんの車の中で、化粧だけは簡単に済ませておいた。あとは制服に着替えるだけ。

急いで着替えると手ぐしで簡単に髪を整え、ダッシュでフロントに向かった。



< 44 / 222 >

この作品をシェア

pagetop