絶対王子は、ご機嫌ななめ
目の前には見知らぬ男性が立っていて、私の顔を見るなりニヤリと意味深な笑みを見せる。
何なの、この人。
その顔に少し恐怖心を抱きながらも頭を下げて挨拶をすると、部屋の奥から政宗さんの声が飛んできた。
「柚子、そんな奴に挨拶する必要ない。早くこっちに来い!」
「そんな奴って。曽木、もう少しマシな言い方があるだろ?」
政宗さんにそんな奴と言われた男性は、少し屈んで私と目線を合わすと「ねっ?」とウインクしてみせた。
いやいや、『ねっ?』と言われても困るんですけど。
「はぁ……」と曖昧に返事をすると男性の脇をすり抜け、政宗さんに駆け寄った。
「可愛い反応するねぇ~。何? 曽木の新しい彼女?」
男性の私を見る目に不気味なものを感じて、身体がひやりとする。
「おまえには関係ないだろ。さっさと帰れ」
政宗さんはそう言うと、私を庇うように背中の後ろへと隠す。
「はいはい、帰りますよ。じゃあお嬢ちゃん、またね」
かったるそうに手をひらひら振ると、男性は休憩室から出て行った。
男性が部屋からいなくなると肩の力が抜けて、自分がかなり緊張していたのだと気づく。