絶対王子は、ご機嫌ななめ

目の前には見知らぬ男性が立っていて、私の顔を見るなりニヤリと意味深な笑みを見せる。

何なの、この人。

その顔に少し恐怖心を抱きながらも頭を下げて挨拶をすると、部屋の奥から政宗さんの声が飛んできた。

「柚子、そんな奴に挨拶する必要ない。早くこっちに来い!」

「そんな奴って。曽木、もう少しマシな言い方があるだろ?」

政宗さんにそんな奴と言われた男性は、少し屈んで私と目線を合わすと「ねっ?」とウインクしてみせた。

いやいや、『ねっ?』と言われても困るんですけど。

「はぁ……」と曖昧に返事をすると男性の脇をすり抜け、政宗さんに駆け寄った。

「可愛い反応するねぇ~。何? 曽木の新しい彼女?」

男性の私を見る目に不気味なものを感じて、身体がひやりとする。

「おまえには関係ないだろ。さっさと帰れ」

政宗さんはそう言うと、私を庇うように背中の後ろへと隠す。

「はいはい、帰りますよ。じゃあお嬢ちゃん、またね」

かったるそうに手をひらひら振ると、男性は休憩室から出て行った。

男性が部屋からいなくなると肩の力が抜けて、自分がかなり緊張していたのだと気づく。



< 46 / 222 >

この作品をシェア

pagetop