絶対王子は、ご機嫌ななめ
少しだけ緩みかけていた緊張が戻ってくる。
いったいこの人は、何を考えているの?
矢部さんは強い視線を私に向ける。その瞳に耐えられなくなって視線をそらすと、人を馬鹿にしたような薄ら笑いが耳に届いた。
「まだまだ子供だな。ねえ君さ、曽木のこと、どこまで知ってるの?」
矢部さんの言葉に、目線を戻す。
まだまだ子供なのは、そんなこと言われなくたって自覚済み。放っといてほしい。
でもこの人、やけに政宗さんのことを気にするけど、何を知りたいと言うのだろう。
「矢部さん? なんでそんなに政宗さんのこと、気になるんですか?」
私の質問が気に触ったのか、矢部さんが眉間にシワを寄せた。
「気になるわけじゃない。ただ君が曽木に騙されてるんじゃないかと思ってね。忠告してやろうと思っただけ」
「忠告?」
「そう。現役時代の曽木がスタープレーヤーだったのは知ってるか?」
ツアープロとして活躍していたと円歌ちゃんから聞いていた私は、コクリと小さく頷く。
「じゃあ、あいつがトーナメントプロを辞めた理由は?」
「そこまでは知らないですけど……」
「知りたい?」