絶対王子は、ご機嫌ななめ
第三章

  それでも彼が好き


お風呂からあがるとお気に入りの紅茶を淹れて、ローテーブルのお決まりの位置に腰を下ろす。テーブルの上に用意したノートパソコンをおもむろに開くと、電源を入れ起動させる。

「政宗さん、ごめん!」

そうひとこと謝ると、立ち上がったパソコンに『曽木政宗』と打ち込んだ。

矢部さんにけしかけられたから──

そう思っていても、後ろめたい気持ちは消えなくて。影でコソコソ調べてるなんて、なんとなく性に合わないんだけど……。

一度“知りたい”と思ってしまった気持ちはむくむくと膨れ上がるばかりで、マウスをクリックする指は止まることを知らなかった。

矢部さんに無理やり渡された雑誌は、家に帰るとすぐに目を通した。そこには政宗さんの現役当時の記事が載っていて、プロ初戦で優勝したとトップページで特集が組まれていた。

「政宗さんって、ほんとにすごい選手だったんだ」

パソコンの画面にも、初戦で優勝した記事が一番に上がってくる。

でも少し目線を下に動かすと……。

“左親指付け根の関節炎”という文字が、目に飛び込んできた。



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