絶対王子は、ご機嫌ななめ

食い入るように画面を見ると、政宗さんがトーナメントプロを辞めた理由が書かれた記事を見つける。そこには十年前の政宗さんの画像も載っていて、若かりし頃の政宗さんに心がキュンと疼いた。

「今も十分にカッコいいけど」

モデル並みのスタイル、その上イケメンときたら、雑誌やテレビの取材のオファーもハンパなくて。持ち前の明るさに人懐っこい笑顔が人気に拍車をかけ、試合の時は彼が動くとギャラリーも一緒に動くほどの人気者。忙しい毎日を送っていたのに傲ることなく、真面目に練習しその後の大会でも良い成績を収めていた。

「嘘でしょ」

持ち前の明るさに人懐っこい笑顔……。

智之さんから聞いてはいたものの、ここまでだったとは。今の政宗さんからは想像できない。今ではその影すらほとんど見ることはできないし、人懐っこさなんて皆無だよね。

でもそうなってしまったのは、“左親指付け根の関節炎”というアクシデントが突然襲いかかり、それは思っていたよりも重症化したことが原因だった。

予定していた試合を欠場。しかもその試合で優勝すれば賞金王が決まるかもしれなかっただけに、自分の不甲斐なさに政宗さんの悔み落ち込む姿は相当なものだったらしい。



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