絶対王子は、ご機嫌ななめ
そんな政宗さんのことをマスコミは、『自業自得』とか『調子に乗りすぎた結果』など面白おかしく騒ぎたて、成績も人気も急激にガタ落ち。支えをなくした政宗さんは生活も荒れ気味になりスポンサー契約も解除され、プロの世界から姿を消した。
その後、昔から知り合いだった今の会社の社長に拾われ、今に至るということみたいだった。
「ヒドい……」
信じていた人たちに手のひらを返したように扱われ、ひとりで戦っていたその時の政宗さんの気持ちは測りきれない。
そんなことがあったなら、今の政宗さんができてしまったのも頷けるというものだ。
しかもそのヒドイ記事を書いたほとんどが“矢部秋良”で、私の怒りは頂点を突き抜けた。
「あの男、最低!!」
休憩室で顔を合わせた時、政宗さんが露骨に嫌な顔を見せたのは、こういうことだったんだ。もっと早くこの事を知っていたなら、私だってあっかんべーのひとつでもお見舞いしてやったのに!
パソコンの電源を少し乱暴に消すと、ベッドの上に寝転ぶ。天井をじっと見つめれば、そこに浮かび上がってくるのは政宗さんの仏頂面。
あの顔が形成されてしまった理由を知ってしまった私は、これからどうやって政宗さんと向きあえばいいのか……。