絶対王子は、ご機嫌ななめ
明らかになった関係
「橘さ~ん。おしぼりの追加、しておいたほうがいいですよね?」
アルバイトの明里ちゃんが、フロント脇においてあるタオルウォーマーを覗きながら声を掛けてきた。
今日は円歌ちゃんが休みで私がチーフとして張りきっていたけれど、円歌ちゃんほど上手く切り盛りできずにてんてこ舞い。
まだまだダメだなぁ……なんて落ち込んでいる暇もなくて、今していた名簿チェックを一旦やめると明里ちゃんに駆け寄った。
「ごめん、明里ちゃん。おしぼりは私が取ってくるから、明里ちゃんはもうすぐ来る生徒さんたちの対応お願いね」
「分かりましたぁ~」
明里ちゃんって私と二歳しか違わないのに、キャピキャピ度満点で可愛いなぁ。とか思いながら、フロントを離れひとり倉庫に向かった。
従業員しか入れない扉を抜け、一つ目の角を曲がる。男子のロッカールームにさしかかろうとした手前で、そのドアから誰かが出てくるのが見えた。思わず一歩後ずさりして、今曲がった角に身を隠す。
何してんだ、私。何も悪いことをしてるわけじゃないんだから、身を隠す必要なんかないのに。そんな自分が可笑しくてクスッと笑ってしまう。
でもその笑顔も、もう一度歩き出しそこにいた人物を見て真逆のものに変わってしまった。