絶対王子は、ご機嫌ななめ
「円歌……ちゃん」
なんで今日お休みの円歌ちゃんが、こんなところにいるの? しかも男子のロッカールームから出てくるって、どう考えたっておかしくない?
──嫌な予感がする。
起こっては欲しくないことが起こってしまいそうで、目をぎゅっと瞑ると音を立てないように一歩下がる。
お願いだから、ロッカールームから誰も出てきませんように!!
でもそんな私の願いも虚しく、ロッカールームから聞こえてきた声に愕然とする。
もう耳にタコが出来るくらい聞いた、大好きな人の声。
「やっぱり政宗さん……」
顔を見なくたってわかる。間違えるはずがない。
そう思っているのに、『いや、他人の空似ってこともある!』なんて最後の悪あがきで、角からそっと顔を出して確認してみた。
ロッカールームの扉の前にいたのは、円歌ちゃんと……上半身裸の政宗さん。
な、なんで上半身裸なの!? しかもよく見てみれば、円歌ちゃんの髪も少し乱れていて。政宗さんの方に向けた顔はほんのり赤く上気していた。
どういうこと? それってまさか……。
淫らな妄想が、頭の中を駆け巡る。
円歌ちゃんと政宗さんが、ロッカールームであんなことやそんなことを……。
嘘でしょ。
そんなことを考えてる間に政宗さんはTシャツを着ていて、円歌ちゃんと仲睦まじく微笑み合うと、肩を寄せ合い従業員用の出入口へと歩いて行ってしまった。