絶対王子は、ご機嫌ななめ
あれじゃあ、どこからどう見たって恋人同士。私の入る余地なんてない。
「あのふたり、やっぱお似合いだよなぁ」
「!?」
突然耳元に声がして驚きながら振り向くと、いつものアイドルスマイルを湛えた智之さんが立っていた。
「智之さん、いつからここにいたんですか?」
「うん? 柚子ちゃんがここから、ふたりをこっそり見てるあたりからかな?」
だったらもっと早く声を掛けてくれてもいいのに……。私がショックを受けてる姿を見てたなんて、悪趣味もいいとこだ。
「なんか用でもあったんですか?」
わざとつっけんどんな口調で話しかける。
「何か怒ってるの? 柚子ちゃん、可愛い顔が台無しだよ」
智之さんはそう言いながら、私のおでこをツンとついたけれど。今の私には、それに上手く反応することができない。それどころか智之さんが言った『あのふたり、やっぱお似合いだよなぁ』の言葉を思い出してしまい、今にも泣き出してしまいそうだった。
やっぱりふたりは恋人同士で、私は政宗さんにからかわれていただけ。
いきなり現実を突きつけられて、ただ歯を食いしばり泣くことを堪えることしかできなかった。