絶対王子は、ご機嫌ななめ
ふたりの姿が見えなくなると、ホッと息をつく。そしてクルッと向きを反転させると、運転席に座った。
「政宗……さんか」
必要以上に声を発しない人だし表情も変わらない人だったけれど、電話を掛けてくれた時のスマートな態度と私に向けた切れ長の目が忘れられない。
コイツって呼ばれた時のことを思い出すと、なぜだか急に鼓動が速くなってドキドキが止まらない。
もしかしてこれって、一目惚れ?
「まさかね」
否定はしてみるものの、脳裏に浮かんでくるのは政宗さんの顔ばかり。
……て、ダメダメダメ!!
今日は入社初日でしょ。そんなこと考えてる場合じゃない。
キュッと目を瞑り、ブルブルと頭を振ると時計を見た。
「もう十分ないじゃない!!」
今度はちゃんと鞄を持つと後部座席から制服を取り、クラブハウスへと急いだ。