絶対王子は、ご機嫌ななめ

「これはちょっと酷いな。柚子、立てるか?」

政宗さんの口調が、さっきまでの小馬鹿にしたようなものから変わると、私の前にしゃがみ込む。

このままここで倒れているわけにもいかないし、言われたとおり立ってみようと試みたものの。まるで生まれたての子鹿のように足に力が入らなくて、ふらふらっと倒れそうになってしまう。

「あっ!」

「っと。大丈夫か? ちょっと俺の肩に掴まれ」

とっさに手を差し伸べてくれた政宗さんに支えられると、肩に手を添える。でも痛む肩はそれ以上上げることができなくて掴むことができずにいると、それに気づいた政宗さんが脇下と膝裏に手を差し込んだかと思うと、そのまま私の身体を抱き上げた。

「病院に行くぞ」

「ん?」

え? 喋れない私は少しだけ首を振って、「病院なんていいです!」と訴えてみたけれど。それが通じなかったのか、政宗さんは自分の車に向かって黙々と歩いて行く。

どうしてこうなっちゃうのかなぁ……。

会いたくないと思っていたのに待ち伏せされて。逃げれば追いかけられるし、挙句の果てには大転倒してこの状態。こんなんじゃ逃げることもできないし、悲しくなってくる。



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