絶対王子は、ご機嫌ななめ
「ん!? んんんんんんっ……!!」
え? 政宗さんっ……!!
「じっとしてろ。口の周り血で汚れてるんだ。おまえを抱き上げてて手が使えないから、こうするしかしょうがないだろ」
唇を少しだけ離した政宗さんは、普段聞いたことのないような甘い声でつぶやく。
いやいや、しょうがないって言葉で片付けられても! しかも政宗さんには円歌ちゃんという彼女がいるのに、いくら血を拭い取るからって唇を重ねちゃいけないでしょ!!
でも政宗さんは私のそんな胸のうちなんて気付かずに、もう一度唇を重ねる。そしてまた血を拭い取っているのか、丁寧に唇を這わせていった。
「よし、これぐらいでいいか。じゃあさっさと病院行くぞ」
コクリと小さく頷く。
傷の痛みとは違う甘い切ない痛みに翻弄されて、頷くことしかできなかった。
でも政宗さんは、何もなかったようにいつもの変わらないクールな態度。
政宗さんって天然? ホントに口の周りの汚れを取ろうと思って唇を重ねただけ?
私ひとりだけドキドキしちゃって、バカみたいじゃない。
なんだかそれが悔しくて、ダランと下げていた右腕を持ち上げると、政宗さんの服をギュッと握りしめた。