絶対王子は、ご機嫌ななめ
「あ、いえいえ。先生に治療していただいたし、気分も良くなってきました」
「そうか? 無理するなよ。で康成、こいつはもう連れて帰ってもいいのか?」
政宗さんは覗きこんでいた身体を上げ康成先生にそう聞くと、私の右手をそっと包み込む。
「え?」
な、なんで今ここで、私の手を握っちゃうわけ?
驚いた私は気が動転して、政宗さんの顔をマジマジと見つめてしまう。
「おい政宗、独身男の前で見せつけんなよ。柚子ちゃんもそんな目で見つめてたら、政宗にエロいことされちゃうよ?」
「エ、エロいことって……」
もうさっき、されちゃいましたけど……エロいキス。しかも政宗さんには、円歌ちゃんという綺麗な彼女がいるというのに。
でも政宗さんは、キスをしたと思ってないのかな? 手が使えないから汚れを口で拭っただけ……なんて、そんなことが通用するとも思えないんだけど。
見つめていた視線を少し下げ、政宗さんの唇を見る。
この柔らかそうな唇が全部悪いんだ!
なんて意味不明なことを頭の中で叫んでいると、「ゴホンッ」と康成先生が咳払い。その咳で我に返り康成先生を見れば、ニヤニヤと笑っている。