絶対王子は、ご機嫌ななめ

未だ握られている手が、もどかしい。緊張からかじわりと手汗もかいてきて、じっとしていられなくなってきた。

「何?」

政宗さんがポツリと呟く。

「え?」

「手。モゾモゾしてるけど、何?」

「何って聞かれても……。あぁ、康成先生、時間掛かってますね」

困ったときは、話題を変えるに限る。

「そうだな。なんだ、この後なにか用事でもあるのか?」

「いや別に、何もありませんけど……」

政宗さんこそ、円歌ちゃんと約束してるんじゃないですか?と喉まで出かかって、それをゴクンと飲み込んだ。

円歌ちゃん、ごめん!! 今だけ、あと少しだけ、政宗さんを貸してください!!

そしたらちゃんと諦めるから。もう二度と、政宗さんに恋心を抱かないから……。

握られている手に力を込める。すると、政宗さんもギュッと握り返してくれた。

反射的にそうしただけ。なんの意味もない。

そんなこと分かってる。分かってるのに、そんなちょっとしたことが嬉しくて涙が出そうになる。



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