絶対王子は、ご機嫌ななめ
「やっぱり、まだどっか痛いんじゃないのか? おまえ泣きそうな顔してるぞ」
私の顔を見た政宗さんが、心配そうな顔を見せる。
『政宗さんに手を握られてることが嬉しくて泣きそうなんです』と言えない私は、この場を笑ってごまかすことにした。
「え? あはは、大丈夫ですよ。政宗さん、結構心配症ですね。お父さんみたい」
「お、お父さんってな! 俺はそんな歳じゃないぞ」
「分かってますってば」
顔を真っ赤にしてムキになる政宗さんを見て、プッと吹き出してしまう。
やっぱり政宗さんのことが好き。大好き。
でもこの思いも、今日でおしまい。明日にはきっぱり忘れる。だから今日だけは自分の思いのままに、この時間を楽しもう。
そう思っていたのに……。
「おふたりさん、仲がよろしくて」
康成先生が戻ってきて余計なこと言うもんだから、いい雰囲気が台無し。
「タイミングの悪いやつ……」
「え?」
「なんでもない」
なんでもないって。今政宗さん、なにか言わなかった? 気のせい?
不審に思いながら首を傾げてみても政宗さんは知らん顔で、康成先生から薬を受け取っていた。