絶対王子は、ご機嫌ななめ
「三日間俺の家で、おまえの面倒を見てやるって言ってるんだよ。その身体じゃ、ひとりで過ごすのは大変だろ」
政宗さんはさも当たり前のようにそう言うと、車のドアを開けて外に出ようとする。私は政宗さんの腕を掴むと、力いっぱい引き戻した。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「おい、何するんだ!」
「何するじゃありませんよ。政宗さんの方こそ、何言ってるんですか?」
三日間おまえの面倒を見てやる? 何勝手なこと言っちゃってるの?
そんなこと言われても、「はい、よろしくお願いします」なんて言えるわけないでしょ。いくら私が恋に不慣れで子供っぽくても、円歌ちゃんという彼女がいる人の家にノコノコついていくほど無神経な女じゃない。そのくらいの分別はつく。
だけど政宗さんは私の胸の内なんか分かるわけもなく、怒った顔をして私を睨みつけている。
「柚子おまえな、そんな身体で何ができる? そうなったのは俺にも責任があるし、三日間もひとりなんて心配だ」
また責任って言った。何かあればすぐ『責任』って、そんなの全然嬉しくない。そんな心配なら、してくれなくてもいい!
私は鞄を掴むと車から飛び出し、痛い足を引きずりながらその場から逃げ出した。