絶対王子は、ご機嫌ななめ

「柚子!!」

政宗さんも車から降りると、私の名前を呼びながらこっちに向かってくる。

もう! こんな身体じゃなきゃもっと早く走れて、政宗さんの視野から逃れられたのに。

ひょこひょことびっこを引きながらじゃ思うように走れなくて、あっという間に政宗さんに追いつかれてしまった。

腕を掴まれると強引に引き寄せられ、政宗さんの胸の中に捕らわれてしまう。

「その身体で逃げるなんて、おまえは何考えてるんだ」

「何も考えてません。ただ政宗さんに心配してもらわなくても、私はひとりで大丈夫。子供じゃないんだから、何とかなります」

政宗さんに言いながら、自分にも言い聞かせる。

ホントは政宗さんの言葉に、政宗さんという存在に甘えたい。好きな気持を、政宗さんに伝えたい。

でも私はもう、ワガママな子供じゃない。

政宗さんのことを好きっていう気持ちだけで、甘えちゃいけない。そんなことをしたら、円歌ちゃんを悲しませることになってしまう。



< 86 / 222 >

この作品をシェア

pagetop