絶対王子は、ご機嫌ななめ
「柚子!!」
政宗さんも車から降りると、私の名前を呼びながらこっちに向かってくる。
もう! こんな身体じゃなきゃもっと早く走れて、政宗さんの視野から逃れられたのに。
ひょこひょことびっこを引きながらじゃ思うように走れなくて、あっという間に政宗さんに追いつかれてしまった。
腕を掴まれると強引に引き寄せられ、政宗さんの胸の中に捕らわれてしまう。
「その身体で逃げるなんて、おまえは何考えてるんだ」
「何も考えてません。ただ政宗さんに心配してもらわなくても、私はひとりで大丈夫。子供じゃないんだから、何とかなります」
政宗さんに言いながら、自分にも言い聞かせる。
ホントは政宗さんの言葉に、政宗さんという存在に甘えたい。好きな気持を、政宗さんに伝えたい。
でも私はもう、ワガママな子供じゃない。
政宗さんのことを好きっていう気持ちだけで、甘えちゃいけない。そんなことをしたら、円歌ちゃんを悲しませることになってしまう。