絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さん、ありがとうございます」

今日はじめて素直な気持ちで頭を下げると、頭の上に重みを感じる。ゆっくり顔を上げれば、真っ先に笑顔が飛び込んできた。そこにはいつもの仏頂面をした政宗さんはいない。

初めて私だけに見せてくれた笑顔に、心が釘付けになってしまう。

「最初からそうやって素直だと、面倒なくていいんだけどな。じゃあ、そろそろ帰るぞ」

政宗さんはまだ固まったままの私にそう言うと、カートを押してさっさと歩き出す。

「あ。政宗さん、待って!」

ワンピースの入った袋をしっかり持つと、政宗さんを追いかける。

もう、政宗さんったら。あんな笑顔見せられたら、やっぱり“好き”の気持ちが溢れちゃうじゃない。

政宗さんの彼女が、円歌ちゃんじゃなかったらよかったのに──

諦らめられそうにない気持ちを、私はこの後どうしたらいい?

そう問いかけても、答えは出るはずもなくて。今日一番大きなため息をつくと、ワンピースの入った袋をもう一度ギュッと抱きしめた。



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