絶対王子は、ご機嫌ななめ

「政宗さん、私も手伝います」

「なんだ、座って待ってろって言っただろう。そんな手の込んだ料理をするわけじゃないから気にするな」

「でも……」

そんなこと言われたって、気になるというかそばにいたいというか……。この場から離れがたくて、政宗さんの横に立つ。

「何してる?」

政宗さんが、怪訝そうな顔をする。

「もしかしたらなにか手伝うことがあるかもしれないでしょ? その時のために待機してます」

兵隊さんよろしく手をおでこに当てて、敬礼のポーズをしてみる。

我ながら、いい返しじゃない?と思っていたけれど、政宗さんは手にしていた包丁をまな板の上に下ろすと私の方に向き直った。

「なあ?」

「はい?」

「そんな顔して俺を煽ると、どうなるか分かってるか?」

うん? 煽る? 私がどうして、政宗さんのことを煽らなきゃいけないの?

それに私は『手伝うことがあるかもしれないから待機してます』って言っただけ。どこに政宗さんを煽る言葉があるって言うの?

意味が分からない。

少しだけ首を傾げ黙ったまま政宗さんを見ていると、いきなりぷっと吹き出した政宗さんにおでこをピンッと弾かれた。



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