絶対王子は、ご機嫌ななめ

「イタッ。政宗さん、何するんですか?」

「まあいいさ。今はわからなくても、そのうち分かる。好きなだけそこにいろ。でも多分、手伝うことはないけどな」

政宗さんは包丁を持ち直すと、まな板に向ってキャベツの千切りを作り始めた。

うわ、すっごい手際がいいんですけど。なんでそんなに細く切れるの?と見入っていると、肝心なことを忘れていることに気づく。

さっき政宗さん『今はわからなくても、そのうち分かる』って言ってたけど、何が分かるというんだろう。

そのうちじゃなくて、今教えてほしいですけど? なんて聞いても、俺様な政宗さんのことだ。絶対に教えてはくれないよね。

真剣な顔をして千切りをしている、政宗さんをちろっと覗き見る。それに気づいた彼が、一瞬だけ目線を私に向けた。

ほんの一瞬。時間にしたら一秒も目線は合っていないのに、それは私の感情を高ぶらせるのに十分。政宗さんの目はそれほど、艷やかで美しいものだった。



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