熊と狩人
4
そして現在、熊は檻の中にいる。
狩人は、檻の外で頭をかかえている。
どちらもさっきからずっとだまりこんでいる。
しばらくしてから、熊のかすれた声が沈黙をやぶった。
「話すよ」
「え?」
「おまえの妹を殺した理由、話す」
「・・・・・・」
狩人はゆっくりと顔をあげた。熊をにらみながら立ち上がり、ふたたび椅子に腰をおろす。
「やっと、その気になってくれたのか」
「そのかわり、おまえも話せ」熊はにらみかえす。「おれの妻を殺した理由、話せ」
狩人は、少しの間うつむいてから、うなずいた。
「ああ、わかった。当然だ」
熊は、口にたまった血を吐き捨てて、声をしぼりだすようにして語りはじめた。